髪を伸ばすということ (2011/10/27・加筆)
「 髪を大切にしているから伸ばしたい。 」 ある方からこんなご相談を受けた。
「 切らない方がいいんでしょうか? 」 とも言う。
その方の問いかけには髪を切ることの意義を問われているような迫力があった。
ファッションとしてロングヘアをめざす方もいれば、ライフスタイルや主義として
髪を伸ばす方もいるんだと知らされ
“ 髪を切ること ” だけではない美容室の正しい使い方が
ここにあると感じさせられる相談だった。
「髪を伸ばす」ということを髪の長さだけでとらえれば
『 どうぞ切らずにそのまま・・・ 』 となってしまう。
そうすれば間違いなくロングヘアにはなれるのだが
そこに美しさがあるかどうかが問われてくる。
そこで、 『 髪を伸ばす 』 ということを “ 早く伸びる方法 ” ではなく
“ 美しく伸ばすために本人は何を、美容室は何をなすべきか ” に焦点をあて
1 : 髪の特性 2 : 扱い方 3 : 手入れの方法
に分けて当Labで考察する。
1. 髪の特性
Ø 髪は毛母細胞で作られる。 髪の毛そのものに成長・再生能力はない。
Ø 毛母から皮膚外に押し出されるように伸びる、皮膚に近いほうが若い髪である。
Ø 一年間で伸びる長さは、(個人差はあるが )… 約15cm~25cm
Ø 毛母細胞の寿命は約8年、つまり一度もカットしないでいると、120cm~200cmまで髪は伸びる事になる。 (中国では髪の長さが2メートルを超える人間がいた記録があるらしいが…検証されてはいないようだ)
Ø 髪の毛はタンパク質(アミノ酸)で構成されている。
Ø 水分、油分を吸収しやすい。
Ø 伸縮性がある。
Ø 帯電しやすい。
2. 扱い方 長い髪と短い髪は異なる扱い方を要する
Ø 髪の束を均一にするためには1回のストロークで梳き解くブラッシングがベスト
長い髪
ブラシやクシを使って髪を梳く時の、ストロークは50~65cm前後までが限界で、それ以上の長さに対しては 2ストローク以上を要する。長い毛束の場合、ブラッシングの途中でブラシをいったん止めて、毛束の途中から再度ブラシを入れることになる。この時にストロークが重複した個所では毛束の均一性が損なわれることになる。
短い髪
50cm以下の長さの場合、本人のブラッシングで毛先まで均一の環境を作り出されるため、手入れは容易になる。
Ø ブラッシングの機会を程よく多く作る
梳き解く道具の種類
くし、ブラシ、手指、など髪を梳きとくための道具はいろいろある。
化学樹脂のクシ
(短い髪向き) 静電気を起こす/帯電しやすい
ツゲのクシ
(短い髪向き) 時間がかかる/帯電しない/ツヤが出る
猪ブラシ
(長い髪向き) 均一性高い/帯電しにくい/ツヤが出る
ツゲブラシ
(長い髪向き) 均一性高い/帯電しにくい/ツヤが出る/保湿性あり
手のひら
(短い髪向き) 均一性なし/帯電なし/ツヤが出る/保湿性高い
潤滑の種類
髪の表面を摩擦から守るための潤滑剤が必要になる。 もちろん植物由来のオイルがベスト。理由は別ページで述べるがここでは潤滑の違いを説明する。
植物油
(長い髪向き) 摩擦を軽減する/帯電を防ぐ/うるおいを守る
皮脂
(短い髪向き) 摩擦を軽減する/帯電を防ぐ/時間がかかる
シリコン油
(長い髪向き) 摩擦をなくす/帯電しやすい/短時間で解ける
パウダー
(短い髪向き) 摩擦をなくす/帯電しにくい/短時間で解ける/乾燥しやすい
3. 手入れの基本
Ø 均一に梳く
Ø 洗髪後のトリートメントは、髪に与える油分を多く含んだものを選ぶ。
Ø 目の粗いクシを使用することで、髪にかかる負荷を最小限にとどめる。
Ø 摩擦による毛先の帯電に注意する。化繊衣類との摩擦ですぐに帯電してしまう。
Ø ドライヤーによる過乾燥に注意する。過乾燥によって毛髪内は帯電状態になることが多い。 帯電状態の毛髪はホコリやチリを吸着しやすくなり
毛髪表面のキューティクルを損傷しやすい状況に変えてしまう。
Ø 紐を使って纏める。
ピンやクリップなど金属類は点で支えるためフィックス部分では負荷がかかりすぎ
該当部分の毛髪細胞を損傷する。紐は面で支えるために負荷を分散して
髪(毛髪細胞)にダメージを残さない。
Ø 本人にはできないこと = 他者にしかできないこと を明確にすることでパートナー(または美容室)のサポート体制を作る。 特に、髪を梳き流すこと、髪を束ね纏めること、不要毛のカットを定期的に実施して髪を束ねやすい状態を持続する。
Ø 早い段階での損傷部分の除去・・・つまり傷んだ毛先を的確にカットすること。
一度傷んでしまった毛髪は、キューティクルがはがれ他の髪との摩擦係数が大きくなっている。したがって帯電し易くなり他の毛髪に新たな損傷を広げるととにつながる。
最後に
『美しさ』の定義についてはここではふれないが、美しい髪に関しては次の点が重要な要素であると事は誰もが認める。
ツヤがあること
しなやかな弾力があること
手触りが滑らかであること
この3点はほとんどの人種・文化を通して共通する感覚ではないだろうか。
少なくともアジア文化圏では、昔から今も、そして今後も、髪の美しさを表すときにはこれらの要素がが引用され、称えられるのだと思う。
長くなるほどにそのツヤを増し、しなやかに波打つ髪はあこがれ続けるのだと思う。
当ラボでは、様々な実験やサロンでの事例をあわせていろいろな観点から報告を積み重ねてていきたいと思っております。
たとえば、オイルの親和性と浸透性について、肉眼では見えない事例を、判りやすい確認方法を踏まえて解説することや
クシの通り易さが、髪のつやに関与する事、さらに毛穴に皮脂がたまると毛が抜けるってほんと?
など普段何気なく認めてしまっている事柄にも別の機会で触れたいと思います。
同業の方からのご意見、ご指摘などもいただければ幸いです。